レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加



「……え?……き、来てないかな」

「そうなの?」

「えっと、はい…」

「でも。これ、俺が買ってあげたピアスだからさ」

「……っ、」


成央さんの手の平に黒石のピアスが1つ。
どこに落ちていたのか、全然気が付かなかった。
彼が"気のせいかな"と首を傾げるけど。本人が太央にプレゼントしたものなら、尚更ごまかしはきかないだろう。



「あぁ、そういえば。いつだったかな。突然訪問されたかも」

「そう」

「お腹減ったって。で、仕方ないから何か作ってあげた気がする……」


突然は嘘だけど、夕飯を食べさせてあげたのは本当。
言い訳がましい内容に、信じて貰うのは厳しいかもしれない。



「志保ちゃん、太央と仲良いよね」


掌でピアスを転がしながら、発せられる言葉が妙に刺々しい。

自分だって他の女の人と仲良しなくせに。
私、知ってるんだから。
成央さんが奈都って人と浮気していること──。




「……成央さんの弟だからね」


笑えなくて目を伏せたまま彼に紅茶を出す。
テーブルに置いたコップの音が、やけに大きく部屋に響いた。





「太央は俺と違って自由で羨ましいよ」


彼の口から吐き出された台詞は、静かに乱暴で。思わず顔を上げれば、一瞬だけ、いつも穏やかな彼の顔が歪んだのが分かった。

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