レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「こちらでよろしいでしょうか?」
ショーケース上に2つの指輪が並べられる。
小さなダイヤが埋め込まれたシルバー素材の典型的なタイプだ。
そういえばこの結婚指輪を選ぶ時も、彼は店員さん任せだったな。
ブライダル専門のジュエリーのお店には、何組もの恋人たちが来店しており、私達もその1組だった。
「刻ませて頂いた、イニシャルとメッセージはお間違いないですか?」
成央さんが手に取って確認している姿を、ただぼんやりと眺める。
「志保ちゃんも、大丈夫だよね」
指輪の内側には、成央さんと私の名前が刻まれていた。
"N&S Whis love"英語で愛をこめてと彫られているけど、このメッセージを決めたときはどんなに嬉しかったことか。
左手の薬指にぴったりとはまる指輪を外して、2つ並べてリングケースへと戻す。
彼がカードで会計を済ませてから、お店を後にした。
「式まではつけなくていいよね」
「……」
「志保ちゃん?」
「……えっ?」
「今日、少し調子悪そうだけど。もう帰ろうか?」
何の心の準備も出来ていない私にとって、それが1番いいのかもしれない。
"はい"と返事をしようと思ったところで、後ろから聞きなれた声が耳に入る。
「あれー?兄さんと志保ちゃん!」