レールアウト~婚約者に裏切られて彼の弟(生徒)にせまられます~番外編追加
「失礼しました」
パタンと扉を閉める。教頭室から出ると、安堵の息が漏れ肩の力が一気に抜けた。
"噂"と聞いて真っ先に奈都さんの画像を想像したのだけど──。
「先生、ごめんなさい……」
なんて声と同時に、太央が廊下の掃除用具入れの影から姿を現すから驚いた。
「太……、黒木くん?なんでここに?今は授業中の筈でしょう?」
あろうことか理事長室の目の前だから、慌ててこの子を引っ張って移動する。
少し離れた空教室に入り、しゃがんで身を潜めた。
「今日、学校に来たらさー。志保ちゃんのことめっちゃ聞かれてさ。水族館にいった時の写真インスタにあげたやつに、志保ちゃんの腕時計?写ってたりして。しかもさー、理事長に志保ちゃんが呼ばれたって聞いて心配でー」
実の父親が倒れた時でさえ心配しないのに、おかしな話。
そう、学校の生徒たちに回っていたのは、太央がSNSにあげた画像。
朝、橘先生に見れられた画像には、私の腕時計が写っていたのだ。
それに加え、校内で一緒に会話したところ、保健室で他の生徒に見られたメッセージ。
理事長先生に呼ばれたのは、それらに帯びれ背びれがついていった"ただの噂"が理由だった。