協道結婚
「おう、来たか」

道着姿の重蔵…と流水 源人(るすい みなと)
がいた。

流水流柔術師範 流水源人。
静華の父である。

重蔵は、「全て」知っていたのである。

「お父さん、なんで…ここに?」

「久しいな、静華。話は聞いておる」

「先生、私から説明を」(重蔵)

「せ、先生ィ〜⁉️」(二人)

驚く二人に重蔵が話し始める。

「誠、お前が街に出ておかしなことを始めた時から、ずっとその行動を見ていた」

「監視してたのですか?」

「すまん。これでも親バカでな。お前が彼女…静華さんと頻繁に会っていることを知り、最初は、仕事中にけしからん!と思ったが、それが、どうやら協働作業であることがわかった。そんな折に、あのラブさんに会った」

(ラブ?)静華に分かるはずはない。

「静華さんの素性を調べると、流水先生に辿り着き、これは運命と思い、毎週日曜日に来て頂いて、心の鍛練をしているんだ。先生には色々なものを教わった。もちろん、静華さんとお前のことも話した。」

父の態度が変わったことが理解できた。

「お父さん!社長さんに先生だなんて呼ばせて、何考えてんの全くもう〜」

「静華さん。人の世には、上も下もないんですよ。人と人の間では、権力なんて無意味。…と、まぁこれは、ラブさんの受け売りだがね。教わる者が、教える者を先生と呼ぶのは子供でも知っている。いや、むしろ純粋無垢な子供の方が分かっているのかも知れん」

「ま、まぁ…確かに」

岩崎建設の社長。
静華が思い描いていた、傲慢で強欲な姿はそこにはなく、優しい父親の姿があった。

「しっかし、静華。重蔵さんから聞いてから今まで、待ち侘びたぞ、全く。ねぇ重蔵さん」

笑顔で頷く重蔵。

「では?」(二人分)

サッと正座する源人(みなと)。
それにならう重蔵。

「ふつつかな娘ですが、よろしく頼みます」

「こちらこそ、末永くよろしく頼みます」

唖然とする二人であった。

「おぁ、そうだった。静華さん、社長夫人と言うのは、何かと苦労は多い。でも決して無理はしないようにな」

「しゃ、社長夫人…って⁉️」

「正式には、明日の総会で決まることだが、誠、お前は良い仕事をしてきたな。異論を申すものはおらんだろう」

「父さん、まだ心の準備が…」

「以上❗️さぁ、先生。もうひと稽古頼み申す」

「よし❗️やりますか」


こうして、無事に二人の結婚は承諾されたのであった。


(よし❗️じゃないでしょ💦社長夫人?いきなり💦マジマジ、マジで!…聞いてな〜い!)
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