チョコにありったけの祈りを込めて

 なんでも“I love you”を日本語に訳すとき、直接的な言葉で伝えるのが苦手な日本人男性の気持ちを汲んで、“月が綺麗ですね”にしたのだとか。
 だからそこには、愛の告白の意味があるのだ。

 ……いや、ちょっと待って。それだと爽来が私を好いている意味になってしまう。


「私、さっき振られたよね?」

「ん? 誰が誰を振ったって?」

「爽来が、私を」


 爽来は眉をひそめて信じられないとばかりにため息を吐いた。私はかける言葉が見つからなくて首をかしげるしかない。


「今の話の流れで、なんでそうなるんだよ」

「だって……爽来はセクシーで綺麗系の子が好きなんでしょ?」

「は? そんなの一度も言ってないけど?」


 高校時代にそういう噂を耳にしたのだと説明すれば、誰が言いだしたか知らないが完全なデマだと否定された。
 当時の私はそれを信じていて、確実に告白の妨げになった。なのに本当は違っただなんて。たしかに爽来自身からそんな話は聞かなかったけれど。


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