チョコにありったけの祈りを込めて
「実は俺もずっと衣咲が好きだったよ。違う子を好きになろうとして彼女を作ったこともあったけど……俺がこんなだから、うまくいくわけないよな」


 私が知る限り、爽来には恋人がいたことが二度あった。大学二年のときと四年のときだ。
 爽来はモテるから、向こうから告白されて付き合ったみたいだが、それぞれ短い期間で終わっていた。
 
 なので、ずっと私を一途に好きだったとは、にわかには信じがたいのだが……。
 

「衣咲は俺を友達としか見てなさそうだったし、脈がないなら諦めようって何度も思ったんだ。でも、俺の心の中にはいつも衣咲がいた」


 私と爽来は出会って六年経つから、彼の人となりは知っているつもりでいる。
 爽来は自分を良く見せようとしたり、人を傷つけるような嘘をついたり、そういう卑怯で度量が狭い部分は一切ない。やさしくて正直者だ。

 そんな性格だからこそ、今の言葉にも嘘はないとわかる。


「もっと早く衣咲に告白すれば良かったー! なにやってんだ俺、六年も……」

「言えなかったのは、私も同じ」


 元はといえば、“友チョコ”だなどと、私がその場しのぎの嘘をついたのが原因なのだ。
 あれがなければ、お互いこんなに(こじ)らせたりしなかっただろう。

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