チョコにありったけの祈りを込めて
「三日月で薄雲がかかってても、爽来と一緒に見る月なら綺麗だね」


 もう一度月を見上げ、その視線を爽来に移せば、彼ははにかみながらそわそわとして私から目を逸らせた。
 きっと、今の言葉の意味を理解したからだ。


「爽来、好きだよ」


 ストレートに自分の気持ちを言えることが、こんなに幸せだなんて思いもしなかった。
 臆病だったせいで、盛大に遠回りしてしまったけれど。


「俺にも言わせろって」

「……え?」


 爽来が急に私の行く手を塞ぐように真正面に立った。
 そして、少し体をかがめて私の顔を覗き込んでくる。


「俺も衣咲が好きだ」


 爽来が風で乱れた私の髪を耳にかけた。その行為で、心臓がドキドキと早鐘を打つ。

 本当に嫌味なくらいキリッとした男前だな、と見惚れていたら、唇にふわりとやさしいキスが降って来た。


「今日から“恋人同士”でいいよな?」


 顔を赤く染めながらもコクリとうなずくと、爽来は「よしっ!」と小さくガッツポーズをした。


 Happy Valentine 今日が交際一日目。

 私は一生、この幸せな日を忘れないだろう。



――― fin.

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