総長、私のリボンほどいて。🎀


 7月26日の昼前。私は教室で自分の椅子に座っていた。

 2学期の終業式、終わっちゃった。
 もう夏休みかぁ、全然実感わかないな。

 朝、下駄箱の前で夕日(ゆうひ)ちゃん達と会って、
 深夜に氷雅(ひょうが)お兄ちゃんと月沢(つきさわ)くんが喧嘩したみたいで看護師さん止めに入ったこと聞いたけど、なんで私に電話かかって来なかったんだろ。

 氷雅(ひょうが)お兄ちゃんに言わないでって頼まれたのかな?
 とにかく心配だし、夕日(ゆうひ)ちゃん達と今日もお見舞いに行こう。

 ガタッ。
 私は椅子から立ち、鞄を持つ。

星野(ほしの)、少しいいか?」

白瀬(しらせ)先生? どうしたんですか?」

「前に“無理に人と関われとは言わないが、もっと周りを見た方がいい”と言ったことを覚えているか?」

「あ、はい」

 白瀬(しらせ)先生は優しく笑う。
星野(ほしの)、周りをよく見れるようになったな」

「え、ほんとうですか?」

「あぁ、変わったよ。月沢(つきさわ)との関わりが星野(ほしの)を変えたんだろう」
「“あんなクズな生徒、気にかけるだけ時間の無駄だ。今すぐ忘れた方がいい”と言ったことは撤回しよう」
< 428 / 480 >

この作品をシェア

pagetop