Mazzo d'amore
「え!?心春ちゃん釣りするの?俺たまにするんだよ」

「え!?ええとええと、うん」

「どうしよ、兄、天然発動しちゃった」

みゆは明菜さんとケラケラ笑ってた。

「じゃあさ今度時間有ったら釣り行こうよ!シー?バス?」

「えっと……うんっと……シーバスかな」

その後も釣りに関しての話しを私にする稜くんに明菜さんは

「心春ちゃんは釣りやらないから」

と、ストップかけてくれた。

「なんだー!騙された!」

「ご、ごめんなさい」

「良いよ、まあいつか興味あったら釣り行こうよ教えるからさ」

「うん!!」

お店を退店する際、私は明菜さんにお願いした。

「あの、実は母が明菜さんの事好きで、その良かったらサインいただけませんか?」

「え?そうなの?サインで良ければ全然するけど………じゃあ、今度お母さん連れて我が家おいでよ。夜ご飯ご馳走するから」

「え!良いんですか!じゃあ、母に聞いときます」

そう言ってその日解散した。

そして、翌月の6月。

私と母は上島家に招待された。

「えー!いいなぁ!つよぴょんにパパもあーいーたーいー」

父も行きたがっていたが残念ながら仕事でいけなかった。

玄関に入って明菜さんに出迎えられた。

「あのこの度はご招待ありがとうございます」

今まで見た事ないぐらい緊張した母がいた。

「あのこれつまらない物ですが」

そう言った母は明菜さんに手土産を渡した。

「まあ!お気遣いしなくて良かったんですよ。でもありがとうございます」

「いえいえ、流石にごちそうになるのに何も無しにとは…お口に合うかわかりませんがお酒が好きとお聞きしたので…」

「え!ここで開けて良いですか!?」

母の言葉に明菜さんの顔は一気に嬉しそうになり袋と木箱を開けた

「まあ!獺祭(だっさい)山口のお酒ですよね!ありがとうございます。私好きですよこれ!高かったでしょ?」

「いえいえ、そんなに高くないですよ。お好きで良かったです」

喜ぶ明菜さんの姿に母は安堵してるようだった。

「良かったねお母さん」

「うん」

憧れの人を前に母は少女に戻ってるような顔になっていた。

ちなみに母は

「私にとってはかなり奮発した」

と、後日言っていた。
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