Mazzo d'amore
「……明日、もう一回来るから。それでダメなら諦めるから」

そう言って光太郎は帰って行った。

私はその晩悩んで悩んで悩みまくった。

私は受け入れて良いのだろうか。

私が受け入れるとその瞬間、私は幸せになるかもしれないが光太郎は不幸になるかもしれない。

私は彼の人生を台無しにするかもしれない。

けれど受けるにしても断るにしても明日で終わりと告げられた以上、これ以上話は先延ばしにならない。

(………というか、ずっとプロポーズ断ってるんだから先延ばしもクソもないんだけど)

私はクスリと笑い、全然強くないのにストロングゼロを開け月夜に一人乾杯した。

翌日、

『外に出て来て』

光太郎からメールが来た。

「最後だからさ、海でも見に行かない?」

「なにそれ?……まあ、良いけど」

私は車の助手席に乗り込んだ。

「レインボーブリッジ、封鎖出来ません」

「みんな一度は絶対それ言うよね」

「やっぱ名言過ぎるんよね」

夕暮れからの橋のライトアップはロマンチックな風景を演出する。

横浜ベイブリッジも渡り

「到着!」

そう言って着いた場所は横浜港を見下ろす小高い丘にある公園。

港の見えるイングリッシュローズの庭だった。

「綺麗ね」

「ああ…たまには良いだろ?こう言うのも」

「そうね…」

すると私の鼻を無数の花の香りが風に乗り運ばれてきた。

ふと、その風上の方を向くと、緊張した面持ちでバラの花束を持った光太郎が立っていた。

それまで手には1輪の造花のバラでプロポーズをしてきた光太郎だったがその日の手には100本のバラだった。

「バラの100本の花束の意味は『あなたを愛します』『100%の愛』僕と結婚してください」

「………はい」

「だからなんでってば!?………え?」

私はこの日100回目のプロポーズにして光太郎と結婚をする事とした。
< 70 / 96 >

この作品をシェア

pagetop