Mazzo d'amore
けどまあ中にはこうやって悟しても店外を求めてくる男性も多くて中にはストーカー化するお客様もいらっしゃって、深夜お店帰りに歩いてると

「やっほ!心春ちゃんお疲れ!僕ちんだよ」

僕ちんが現れた。

(うわ、こいつも遂にここまで来たか)

と、頭を悩ませてしまった。

「ねえねえ、この後家に帰ってご飯食べるでしょ?美味しいご飯奢るから食べに行こうよ」

毎回思うのだが男性は女性をデートに誘う際、何故ご飯に誘うのだろうか。

「ねえねえ良いでしょ?サッパリしたのが良いよね?」

私はそんなにお腹減ってないし物乞いでもない。

「それともいっぱい食べたい?何が嫌いだったっけ?」

お互い会話をしてく中でその人の好きな所を見つけ、そこに行きたいと話しになったならばそこに誘うのはありだと思うが毎回毎回どいつもこいつもご飯。僕ちんもご飯。

「後さご飯食べるにしてももう遅いし何処か泊まろうよ、ね、そうしよう」

状況を見て行った方が良さそうだったり、無視して帰った方が良さそうだったりと判断するのだがこの日の私は母の死からまだ立ち直れてない事もあり精神的にも不安定で大声で叫んでしまった。

「行かないっつってるだろうがっ!一回りも歳下の小娘相手にしつこいんだよ!」

僕ちんの驚き目を見開いた姿を見て

(あ、やっちゃった…)

と、思ってしまった。

ただ、もうやってしまった事は仕方ない。

私はごめんなさいと一言、言って足速にその場を去ろうとしたがグッと腕を掴まれた。

「いった」

「いま、いま、いま、なんて言ったの?」

完全に瞳孔が開いて血走った目をしてる僕ちんに聞かれた。

あ、やっばこれ危ないヤツだ。

「ちょっ…やめて…はなしてっ」

「俺の事大事って言ったよね?優しいから好きって言ったよね?」

「それは…お客様…としてですよ」

「俺の事大好きって言ったよね?愛してるって言ったよね?」

(……え?それはガチで言ってないんだが……妄想乙)

必死に抵抗するも男性にはどうやっても力では敵わない。

(どうしよう困ったなぁ…あまり大ごとにはしたくないなぁ…)

そう思ってると助けが入った。

少し離れた場所から大きな声が聞こえた。

「まてぇい!」

「だ、誰だ!?」

そう言って周りをキョロキョロする僕ちん。

(だ、誰だって言う人現実に居たんだ…)

「この世に悪がある限り、正義も…あるん…だよ…えっと、いざとなるとセリフって思いつかないもんなんだな。ええい!その手を離しなさい!子泣き爺見参!」

「まさかの親父かよっ!」

少し離れた場所から子泣き爺がワーッて言いながら走って来た。

いや、ちんちくりんで可愛いなおい。
< 78 / 96 >

この作品をシェア

pagetop