Mazzo d'amore
「なんなんだよお前は僕ちんと心春ちんの邪魔をするな!」

「何お前こそウチの娘の腕を掴んで暴力しようとしてんだ許さんぞ!」

「お前みたいな子泣き爺が心春ちんの父上なわけないだろ!嘘つくな」

(いや、事実なんですけどね)

なんか僕ちんも喧嘩はそんな強くないけどウチの父も負けじと強くないのでちっちゃい子供同士が引っ掻き合うような喧嘩をしてました。

ポカスカやり合う中で父が意気揚々と叫びました。

「殴ったね!親にも殴られた事ないのに!」

(絶対このセリフ言えたって父喜んでんだろうな)

そんな事を思いながら大人二人がポカスカやってるのをしばらく眺めてたら自転車に乗った稜くんに出会い話しかけられました。

「ど、どうしたの?大丈夫?」

「あ、稜くん!お願い、助けて!」

私は事情を説明し、とりあえず二人を怪我させないよう引き離してもらいました。

二人共慣れない喧嘩に目を真っ赤にして半泣きになってました。

「とりあえず二人の言い分はわかりました。で、僕ちんさんは今後、心春ちゃんに近づかないでね。こんな事があったんだから」

「え?でも、僕ちんと心春ちんは恋人同士なんだ」

「違うよ」

そう稜くんは言って私の肩をグイッと寄せた。

「心春は俺の彼女だから。な?」

なにこれクソカッコイイんだが。

吊り橋効果とかよく耳にするがこんな場面で好きな人に言われた私はいちころだった。

稜くんの問いかけに私は何度もコクリと頷いた。

ガビーンと落ち込む僕ちんに少しだけ悪い事したなと思ってその場を去った後、改めて稜くんにお礼を言った。

「あの、今日は本当にありがとうございました」

「いえいえ、俺なんてたまたまなんだから。それに本当の英雄は心春ちゃんのお父さんでしょ」

「え?」

「知らなかった?前にも出会した事あるんだけど、心春ちゃんが出勤する日は心配で必ずお店の近くにお父さん居る事を。最高に娘思いのカッコいいお父さんだね」

すると父は慌てふためき顔を恥ずかしそうに隠してた。

そうだったんだ…

ありがとう。

お父さん。

「あ、そうだ、これ余り物だけど良かったら食べてよ」

そう言ってクリームパンを二つ渡してきた。

「家で母さんと沢山作ってみたんだけどさ思ったよりも美味しくて沢山の人に配ってるんだ」

「ありがとうございます」

「じゃ…またね」

(ところで俺の彼女って言った件は?本当なのかな?)

この日寝付きが悪かったのは言うまでもない。
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