Mazzo d'amore
「あれは良い試合だったねぇ!身体能力も経験も勝る上島選手に対して渡辺選手も負けん気の強さと格闘技センスで立ち向かって興奮したよ!」

そしてお客様はビールを飲み干しおかわりを要求した。

「ところであれどっちが勝ったんだったっけ?」

「ふふ、それはですね…」

私は当時を振り返りお客様に話しだした。

年末大晦日、私は上島家に招待され試合会場に足を運んだ。

これまで私の年末の過ごし方と言えば家でゴロゴロしながらお笑い見たり紅白見たりして年越しそばを食べて、日付けが変わる瞬間に父とジャンプし

「俺、年越した瞬間地球に居なかったしー!」

「いえーい私もっ!」

そうやるのが恒例だった。

それが何故か格闘技を知らない私がこの席に座ってる。

良いのだろうか?

きっとここの席は超アリーナで高額の場所に違いなくて欲しがってる人が沢山居るはず。

そんな場所に私が座って観戦して良いのだろうか。

(カメラに私の顔が抜かれたらどうしよう)

要らぬ心配に注意を払い何度も手鏡で前髪を直した。

ちなみに稜くんと菜音くんが戦うのはキックボクシング。

ルールも良くわからないがキックボクシングルールって奴は投げたりしたらダメみたい。

「噛むのは?」

「ダメ」

「目潰しは?」

「ダメ」

「金的は?」

「さっきからダメな事ばっかり聞いてくるね、ほんとはルール知ってるんじゃない?」

みゆに怒られた。

とりあえず卑怯な攻撃はダメで正々堂々と殴り合うらしい。

試合は全部で16試合あり二人の試合はちょうど中盤辺りだった。

それまでの試合はまあ激しかった。
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