Mazzo d'amore
パンチとかキックの音って観戦席まで聞こえると思わなかったのにビシバシ破裂音みたいなのが席に座ってるのに聞こえてくる。

音が聞こえるどころか音を感じる。

(ひぃーーー)

パンチやキックが相手の顔や体に当たると私は思わず目を瞑ったり背けたりするが観衆は違い歓声を上げたりとヒートアップする。

「怖い?」

そんな私に剛さんに聞かれた。

「はい、正直…楽しさがわからないです…」

「ちなみにフィギュアスケートは好き?」

「あ、はい。大好きとまでは言わないですがテレビでやってたりオリンピックでやってたら観ます」

「なんで好き?」

「やっぱり…技の美しさですかね。しなやかであり力強さも見えて楽しいです」

すると剛さんはニコリと微笑み私に言ってきた。

「格闘技もね、良く見たら美しいんだよ」

「え?」

「細かい技のやり取りや駆け引きは素人の俺にはわからないけど、鍛え抜かれた体から一発一発繰り出されるパンチやキックも良く見るととても鮮麗されてて美しいんだよ」

「そうなんですかね……まだ良くわからないです」

「はは…まあいきなり苦手なのが得意にはならないからね」

そう剛さんと言われてからよく見てみたら、確かに選手の繰り出されるパンチがあたると弾け飛ぶ汗。

相手の顔にまで届くしなやかなキック。

(たしかに……少し…美しいかも)

少しだけ、ほんの少しだけ格闘技が観れるようになった。

そして遂に、上島稜対渡辺菜音の対戦となった。
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