負けた後に訪れる幸せ
ステージに上がると、どこからか、ヒュー!と指笛が鳴った。

「なんでここに呼び出されたか、薄々は察してますよね?」

司会者の男子が当然のように尋ねる。

「全然」
「まぁ」

私たちは同時に答えたけれど、本宮くんの反応は、私とは全く違う。

うそ!?

だって、さっき教室では分かんないって……

「あれ? 小川さんは分かりませんか?」

司会者が意外そうに尋ねる。

「はい」

なんで?

ステージ下からの視線が、なんだか普段とは違う気がする。

「じゃあ、本宮くん……ってめんどくさいな、真一、教えてやれよ」

どうやら、司会者は本宮くんの友達だったようで、突然、話し方が砕けた。

「は!? なんでだよ! それを言うのがお前の役目だろ」

普段おちゃらけてる本宮くんが、なぜか顔を真っ赤にして反論してる。

いつも怒ったりしないのに、どうしたの?

「しょうがないなぁ。小川さん、よく聞いてくださいね。お二人は、次期里高(さとこう)ベストカップルに選ばれました! 拍手!!」

司会者が煽ると、会場から大きな拍手が湧き起こる。

はぁ!?
ベストカップル!?

「ちょっ、ちょっと待ってください! あの、私たち、付き合ってませんよ!?」

噂にすらなってないのに、なんで!?

あり得ない称号にうろたえた私は、慌てて否定する。

けれど……

「あれ? 小川さん、もしかして、投票用紙の説明、読んでない?」

なに?
読んでないとダメなの?

「……はい、ごめんなさい」

「じゃあ、説明します」

そう言って、司会者は説明してくれた。

次期里高ベストカップルというのは、今は付き合ってないけど、きっと付き合ったら、来年のベストカップルになれそうな2人のことらしい。

「お2人には、文化祭が終わるまで、ずっと手を繋いで過ごしてもらいます」

は!?

司会者の言葉に、私は耳を疑った。

「ちょっ、それは!」

なんでそんなことしなくちゃいけないの!?

「全員に配った投票用紙に、ちゃんと書いてありましたよ。ねっ、皆さん?」

司会者が会場に問いかけると、皆がうんうんと頷く。

「だろ? 真一」

本宮くんはそう問いかけられて、

「ああ」

と渋々うなずく。

ええ〜!?
そんなぁ……



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