【短】邪魔な境界線
「なあ話聞いてる?」
「聞いてるよ。てかそーゆーとこなんじゃないの。“女々しい”」
「えっ、俺って女々しいの?」
「え、自覚なかったの今まで」
手から滑り落ちたポテトフライはそのまま元の位置へ着地した。それらはまた彼の口の中へ運ばれていく。
てか、なんでいつも別れる原因を分かってないんだコイツは。相当な女々しさなんだよアンタ。聞いてる限り。
「え、まじで言ってんの? 初カノと別れたのも、2人目も。んで今回も原因はアンタでしょ。思い返してみたら?」
学校中の女子のほとんどは彼の見た目で騙されるんだ。
今回の彼女も思い描いていた彼と違ったのだろう。可哀想に。でも私は別れてくれて嬉しいからこれ以上は同情なんてしない。
真面目で、人を寄せつけようとさせてくれない目付きとそのオーラ。だけどたまに魅せられる笑顔に女子は騙されて、好きになって、告白して……晴れて付き合う、という今までのルーティン。
彼には全くもって悪気があるわけじゃないのは確かで。ほんと色々と浮かばれなくて見てるこっちまで悲しくなる。
学校では無口だし、王子様扱いされてるし、本当の彼を知っているのは彼の友達や私くらいで。今目の前にいる彼は紛れもなく素の彼だ。
よく喋るし、よく食べるし、甘党だし、コーヒーは甘くしないと飲めないし……外見は大人びいていても中身は全然子どものまんまなのだ。