俺様ドクターの溺愛包囲網


学生時代の飲み会は専ら煙の充満した居酒屋だったし、友達と会うときも、カフェかファミレス止まりだったから。要先生はドアを開ける仕草一つにしろ所作が綺麗で、私が見ても慣れているんだということがわかった。

ということは、日比谷先生もだろうか?いや、当然か。同じ家で同じ教育を受けてきたんだから。日比谷先生は、どんな女性をつれて行くんだろう。どんなふうに笑顔を向けるのだろうか。

「宮永さん、どうかした?」
「え? あっ……」

覗きこまれ、慌ててかぶりを振る。どうしてここで日比谷先生の顔がちらつくんだ。せっかく要先生が誘ってくれたんだから、集中しなきゃ。

「あの、楽しみですね、お料理」
「そうだね」

優しい声色で言うと、先生は中へと促した。なにもかもレディーファーストで戸惑ってしまう。こんな風に大切そうに扱われるのも初めて。

ウェイターさんに案内されテーブルに着いた。周りはお金持ちそうな夫婦や、カップルばかり。今日のために思い切って新調したワンピースだけど、きっとあの人たちがもっている服やアクセサリーに比べたら、足元にも及ばない金額だろう。

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