意地悪幼馴染みが優しくなって帰ってきたけど、全然信用できません!!



・・・



ということで。
善は急げとばかりに、私の実家に行くことになった。


「有休取らせちゃってごめん」

「最近休んでなかったし。陽太くんに合わせてもらってばっかりだから……そっちの方が心配」


今思えば、かなり無理させてたんじゃ。
急に休むわ、出てきても彼女連れてくるわじゃ。


(……気をつけよう……)


「大丈夫だよー。上手くやってるから」


……って、陽太くんが言うのは分かってるし。


「それより、こっちの方が心配だし、緊張する」


玄関の前まで来ると、陽太くんの表情が少し硬くなった。

「それより」はともかく、彼女の家に行くなんて緊張するよね。
ましてや、親とは面識があるから余計複雑な気分だと思う。
二人で家に帰るなんて、本当にあれ以来だ。
でも、こうやって手を繋いでるのは同じ。


「それこそ、大丈夫。うちの親は、陽太くん大歓迎だし」


私も、いざ彼氏を紹介するんだと思ったら緊張してきた。
こんなにドキドキするなら、さっさと中に入っちゃった方がいい。


「ただいまー」


恥ずかしいことは、すぐやるに限る。
ここで躊躇ったりいつまでも照れてたら、この先もっとずっと恥ずかしい――ずっと、があるって信じてるのなら。


「あっ、輝。どうだった、陽太くん格好よくなってたでしょ。輝の人生で会ったことないくらいのイケメンなんだし。再会して、キュンとしたでし……」


――ええ、しましたとも。


「玄関まで来てから、言いなよ……」

「あはは。この状態は、おばさんも想像してなかったんだよ。まさか輝が、俺を連れて帰るなんて……彼氏として、なんてね」


繋いだ手が熱い。
「彼氏」のところで、そんなうに優しく指を撫でられたら。
きゅっと握り返して、突っ立ってるだけだ。


「予想はしてたわよー。ほら、早く上がって。彼氏、紹介して!! 」


(……小躍りしてる)


いつも以上にハイテンションなお母さんが、うきうきしてリビングに向かうのを追って靴を脱ぐ。


「紹介して」


早いとこ終わらせようという気持ちが出てたのか、ずんずん進む私の腕を引いて。


「……も、もう……!」


耳元で意地悪されて、抗議の為に振り向いたのに。


「……行こ? 」


そんなに嬉しそうに笑って、本当に大好きなものを見てるって甘い瞳に何も言えなくなる。


――俺の夢。


(……なんだな)


そう私が思ってしまうほど、本当に幸せそうに見えてしまう。

なら、やっぱり。
この手、離せない。




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