『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
マンションで別れた敬さんがなぜパパのアパートに現れたのかはわからない。
結果として敬さんに迷惑をかけることになったけれど、私が頼んだわけじゃないと言いたい気持ちもあって、ムッとした表情になる。

「危ないってわかっていて行くのはバカだぞ」
「それはそうだけど・・・」

私はただパパが心配だった。
まさか借金取りに出くわすとは思わずに様子が気になって見に行っただけ。

「それに足、今朝よりひどくなっているだろ?」
「ぅ、うん」

さすがお医者さんよく見ている。
気をつけていたつもりなのに、やはりバレていた。

「何やってるんだよ」

呆れたように言われ、なぜか腹が立った。

「別に好きでトラブルを起こしているわけじゃないわ。パパが心配で見に来ただけじゃない」
何がいけないのよの思いを込める。

「自分を大事にしろって言ってるの」
「そんなこと言われなくても」
「わかってないからだろ」

うっ。
言葉に詰まった。

敬さんの言う事は間違っていない。
危険なものからは自分で身を守らないといけない。でも、そうも言っていられない時だって実際あるわけで・・・

「もういい1人で帰ります」
この空気がいたたまれなくなり車を降りようとシートベルトに手をかけようとして、
「行かせるわけないだろ」
腕を取られ止められた。
< 51 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop