『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
「送って行く」
「いいのに」

叱られた後だからバツが悪くて断ってみたけれど、それでも車は走り出す。

「大体なんで、敬さんがパパのアパートにいたの?」

パパのアパートは病院からも離れているし、たまたま通りかかったなんて偶然はありえない。

「気になって車を出したら真理愛がタクシーに乗り込む所が見えて、ついて来てしまったんだ」
「だから」
それはなぜかと私は聞きたいのに。

「タクシーが家とは反対方向に向かうのが見えたから、気になった」

なるほど。って、
「どうして私の家を知っているの?」

「保険証を見たからな。高城小児科はこの辺では有名な病院だし。すぐにわかるよ」
「ふーん」

確かに、歯医者に行っても買い物に出かけても銀行に行っても、おじさんの名前を言うと『高城小児科のお嬢さん』って呼ばれる。
それが私は好きじゃない。
私はママのおまけとして、高城の家に置いてもらっているだけだもの。

「どうした、気を悪くしたか?」
「ううん、そうじゃない」

ただ、敬さんにはバックグラウンドなしのただの真理愛として見られたかった。
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