『お願いだから側にいて』~寂しいと言えない少女と孤独な救命医の出会い~
「俺も随分好き勝手に暮らしてきたから偉そうなことを言えた義理じゃないが、心配してくれる人がいるって幸せなことだぞ」

フン。
私は返事もせずに窓の外に視線を移す。

「もうちょっとかわいくしてろよ」
運転中の敬さんは、時折私の方を見ながら話かけ続ける。

「悪かったわね、どうせ私はかわいくないですよ」
投げやりに言ってしまった。

敬さんは周りの大人みたいなお説教はしない人だと思っていた。
私の気持ちを理解してくれる人だと思っていたのに・・・

「このままじゃ、いつか真理愛自身が後悔する日が来るぞ」

どうして大人は自分が正しいって前提でものを言うんだろう。
子供だってちゃんと考えているし、大人だって間違えることはあるはずなのに。

「おい、聞いてるか?」
一向に反応しない私に、敬さんの語気が強くなる。
「聞こえない」
いや、聞きたくない。

だって、私は間違っていないもの。

キィッ。
車の止まる音。

わがままいっぱいの私にとうとうキレられたかと思ったら、

「降りて、少し話そう」
意外にも穏やかな声で言われた。
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