若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
24.
 目が覚めたら夕方だった。夕日が窓から差し込んでいて、狭い部屋が赤く染まっている。
 ……お腹空いた。
 そう思いながら起き出して、テーブルの上にメモ用紙を発見した。

 響子さん
 鍵、お借りします。
 夕方5時くらいにまた来ます。
 ご飯作りますね。
 幹人

 へえ。こんな字を書くんだ。
 男性らしい力強い、でも整った綺麗な字だった。
 夕飯作ってくれるって。今日は何だろう? 思わず笑顔になっている自分に気付き、苦笑い。本気で餌付けされている。

 今は……4時か。
 牧村さんが来るまで時間あるしお風呂に入ろうとお湯をため始める。顔を洗い歯を磨くと少しスッキリした。
 人心地着くと空腹を思い出して、残った柿の葉寿司を一つだけと口に入れると我慢できなくなって結局三つ食べた。これは昼ご飯だしと密かに自分に言い訳をする。

 風呂上がりに髪の毛を乾かしていると呼び鈴が鳴った。

「はーい」

 当然、牧村さんだと思って肩にタオルをかけたまま無造作にドアを開けた。

「……響子さん、誰か確認してからドア開けなきゃ」

 開口一番、そう言いながら、牧村さんは困ったような顔をした。

「牧村さんしか来ないですよ?」

「今日はたまたまそうですけど、危ないですよ」

「そうですか? ……じゃあ、気を付けますね」

 まあ、一応女性の一人暮らしだし気を付けるに越したことはないかな?

「本当に気を付けなきゃダメですよ?」

「……はい」

 そんな心配をされるのは久しぶりすぎて、なんだかくすぐったい。
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