若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
 私の手の中には彼女の個人情報がある。
 喉から手が出るくらい欲しい情報だ。住所が分からなくても、あの容姿で勤務先(僕の想像が正しければだが)が分かっていたら、調べられないことないかも知れない。だけど、できるならそんな怪しい手を取りたくはない。それじゃ、まるっきりストーカーだから。
 怪しまれたくない。普通にお近づきになりたい。
 今、僕の手の中には彼女の名刺入れがある。
 車内に忘れ物があったら誰のものか確認するのは普通だろう。勝手に見てごめんなさいと心の中で謝りながら、僕は名刺入れの蓋を開けた。

 N大学病院 脳外科医 若園響子(わかぞのきょうこ)

 やっぱり医者だった。

「若園響子さん」

 指で名前をなぞりながら、声に出してみる。
 なんて綺麗な名前だろう。
 多分、どんな名前だったとしてそう思ったのだろうけど。


< 26 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop