若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
9.
 運命の出会いの翌日、土曜日の朝、玄関先で靴を履いていると通りかかった母が声をかけてきた。

「あら、幹人、朝食も食べずにお出かけ?」

「はい。ちょっと出かけてきます」

 早朝からやってるスーパーに寄って買い出しをして、その後、響子さんの様子を見に行く。朝食はあえて食べずに行くことにした。もしかしたら一緒に食べられるかも知れないから。

「帰りは遅いの?」

「……遅くなりたいところです」

 そう言うと、母は不思議そうには首を傾げた。

「とにかく、気をつけて行ってらっしゃい」

「行ってきます」

 今日は自分で車を運転する。確か、響子さんの家の側にはコインパーキングがあったはず。ちなみに昨日はギリギリ終電という時間だったけど駅にタクシーがいたのでタクシーで帰った。

 スーパーで昨日と同じ銘柄のお粥を探すが見つからない。仕方ないので、置いてある中では良さげな卵粥を選んだ。昨日の梅のお粥もまだあるし大丈夫かな?
 後はおにぎりとサンドイッチ、補充のスポーツドリンク、お茶、プリン、ヨーグルト、ゼリー、リンゴ、キウイ、バナナ……買いすぎか? でも好みがわからないし、おにぎりとサンドイッチ以外は日持ちするから、まあ良いだろう。

 響子さんの家に着いたのは八時半。まだ早いけど、もし今日も具合が悪かったら、この時間なら普通に病院にかかることもできる。
 呼び鈴を鳴らすけど、今日も反応なし。寝てるかな?と思いつつ、もう一度、もう一度と押していると五回目で反応があった。
 起き抜けなのか、響子さんは昨日別れたままの服装のままだった。だけど、おでこのジェルシートはなくなっていた。

「えーと、お仕事は?」

 と聞かれる。

「今日は土曜日ですよ」

 と答えると、ああそうかと言う顔をする。飾らない素の表情が今日も可愛い。

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