若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
「熱、下がりましたね。良かった」

 おでこに手を当てると昨日のような熱さは感じなかった。今日はドアや壁にもたれなくても立っていられてるし、随分と調子は戻ったようだ。

「どんな具合か分からなかったので、一応お粥と、後、食べれたらと思ってサンドイッチやおにぎりなども買って来ました。果物、ゼリー、ヨーグルト、それから追加のスポーツドリンクなども」

「……それは、ありがとうございます」

 響子さんは断ることなく受け取ってくれる。昨日よりは良さそうだけど、まだまだ本調子ではないようで顔色は今ひとつだ。

「どうぞ」

 と差し出し、しまったと思う。買いすぎたせいで結構な重量なのだ。

「上がっても良いですか? まだしんどそうですよね? お粥とかインスタントですが用意しますよ」

 厚かましいかなと思いつつ気づかないふりで笑顔で提案すると、少しの間の後、

「お願いします」

 と中に入れてくれた。
 入れてくれたのは嬉しかったけど、本当に入れちゃっていいの?と無防備ぶりが心配になった。
 部屋に上がると、まだカーテンが閉まっていた。

「座るか寝るかして休んでいてください」

 そう言って、カーテンを開ける。古いアパートだけど日当たりは良好で気持ちの良い朝の光が差し込んで来た。
 あ、天使の輪。
 ついさっきまで眠っていたらしいのに響子さんの髪の毛には寝癖一つなく、外から差し込んだ光が当たってキラキラと光り輝いていた。
 綺麗だな。触りたいな。
 そう思いながら、昨日同様お粥を準備する。今日もリクエストは卵粥。昨日のと銘柄が違うから味が違うかもと言うと、

「昨日はあまり味は分からなかったから問題ないです」

 と返ってくる。
 味がなくてあれだけ美味しそうに食べていたということに驚く。どれだけひもじかったの、響子さん。
 今日はテーブルで食べられそうだからカレー皿に盛り付ける。

「こうするとリゾットぽいですね」

 そう言いながら出すと、響子さんはなるほどと言った顔をする。

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