若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
「お疲れ様でした。大変だったんですね」

 昨日の響子さんな本当に疲れていたのだと思う。それなのに、あの熱でも味がしなくてもご飯を食べようとするし、きっと元気な時の普段の響子さんはとてもエネルギッシュなのだろう。

「あ、そうだ薬。飲まなくて大丈夫ですか?」

 ふと気になって、響子さんのおでこに手を伸ばす。
 昨日のような高熱はないけど、少しあたたかい気がする。自分のおでこに手を当て、響子さんのおでこに手を当てを繰り返して確認する。本当はおでこを重ねたいけど、さすがにまだダメだろう。今日、この後にはそういうことをしても大丈夫な仲に、ぜひともなっておきたいものだ。

「微熱がまだあるかな? また上がると辛いので、もう一度飲んでおくと良いかも。いや、でも下がっているといえば下がっているから普通の風邪薬のが良いのかな?」

 昨日のビニール袋がそのまま置かれていたので、その中から昨日飲まなかった薬を並べると、響子さんは総合感冒薬を手に取った。

「ありがとうございます。これにします」

 そして、規定の量を飲むと、ふわぁっと大きなあくびをした。

「……えっと、すみません。ちょっと寝ても良いですか?」

 答える前にベッドに上がってしまう。

「もちろん。すみませんでした、長話をしてしまって」

 幾ら熱が下がっても、食欲があっても、病み上がりの人相手にやり過ぎたかも知れない。

「おやすみなさい」

 僕がそう言った時には響子さんはもう目を閉じていた。
 ささやくような「おやすみなさい」の言葉が紡がれたと思うと、次の瞬間には寝息を立てていた。
 その寝付きの良さに思わず笑ってしまった。

 さて、この後どうしようか? 昼ご飯と夜ご飯は用意しても良いのだろうか?
 眠ってしまった響子さんを置いて、鍵を開けたまま買い物に行くのも、勝手に鍵を借りて閉めていくのも微妙だ。
 目が覚めるまで響子さんの寝顔を楽しみながら待つのも悪くないけど、せっかくなので点数を稼いでおきたい。
 全て自分で動きたいところだけど、この際、使えるものは使わせてもらおうかな。経済力も環境も、僕の一部な訳だしね。
 そう心を決めると、僕は家に電話をして、お手伝いさんと運転手さんに食材の調達を頼んだのだった。
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