若社長は面倒くさがりやの彼女に恋をする
 朝七時ちょうど。
 今日は一度呼び鈴を鳴らしただけで、すぐに響子さんが出てきてくれた。

「おはようございます」

「おはようございます。……本当に来たんですね」

 昨日、確かに朝七時に来ると言ったのに、響子さんは半信半疑だったらしい。
 僕が響子さんとの約束を破る訳がないじゃないですか。

「はい」

「朝早くからご苦労様です」

 なんだろう。まるで仕事に来た作業者を迎え入れるかのような反応?
 なんとなく微妙な気持ちにならないでもなかったけど、響子さんの顔を見ていたら、そんなことはどうでも良くなってしまった。僕の脳内は今日も朝から響子さんの顔を見られたことで浮かれまくっていた。

 慣れたもので、響子さんは「どうぞ」と家の中に入れてくれる。
 三日目とあって、僕も遠慮なく「お邪魔します」と部屋に上がる。
 
 だけど、真顔だった響子さんは、僕の

「すぐ、雑炊を作りますね」

 という言葉に満面の笑顔を浮かべた。

「ありがとうございます!」

 その変化がおかしくて、思わず僕も笑顔になる。

「響子さんは出かける準備していてください。十五分もあれば完成なので」

「あ、もう準備はできてます」

「もう? ……と言うか、僕のせいですね。朝早くからすみません。本当ならもう少しゆっくりできましたね」

 当然着替えは終わっているし、もうお化粧も終わっている。そりゃ、作りに来るのが朝食だからと言って、朝の準備をまったくせずに僕を迎える訳がないか。病気の時は別だったけど、もう体調は回復したし仕事の日なのだから。
 これは申し訳ないことをしたかも知れない。
< 82 / 192 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop