離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる
8.気持ちを重ねて



七月八月はあっという間に過ぎていった。

営業一課と二課が細分化され、チームという名称が追加された。
俺は二課の特販チームのリーダーとなった。俺だけの出世でなく、全体の再編だったため、妙な妬みなどを生まなくてよかったと思う。俺のチームは同期の矢成がサポートに入り、若手中心の六名体制という少人数だ。それでも責任ある仕事を任されるのは嬉しいことである。

この夏、俺は全力で仕事に勤しんだ。
仕事に邁進できたのは、新妻・柊子との関係が良好なのも理由だ。

柊子とようやく男女の仲になれたのが七月。
柊子から抱いてほしいと言われたときは、脳が沸騰しそうだった。柊子の柔らかな肌に触れ、愛を確かめ合い多幸感でいっぱいになった。
柊子が俺を想ってくれている。それは思いのほか大きなパワーになったように思う。

柊子を守れる男になりたい。柊子の人生を、やがて生まれるかもしれない子どもを、俺が守りたい。一家の大黒柱の責任感だろうか。

そして、仕事に励む俺を柊子は支えてくれている。彼女もまた古賀製薬で働き続けているわけで、忙しい毎日だ。しかし、俺がチームリーダーに抜擢されたのを喜び、応援してくれている。
そんな柊子に何かしてやりたい。
夏の終わり、ようやく取れた夏休みを目前に俺は計画をたてていた。


「海に?」
「ああ、嫌か?」

夕食時、俺の提案に柊子は戸惑ったような顔をしている。

「柊子の夏休みはもう終わってるから、土日使って一泊だけど、海に旅行。どう?」
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