離婚却下、御曹司は政略妻を独占愛で絡めとる
エピローグ



美優さんから電話があるのは久しぶりだ。
長く海外を飛び回っていたご夫妻は、この度美優さんの妊娠をきっかけに数年は日本を中心に生活するらしい。現在はオーストラリアの自宅で帰国の準備中だそうだ。

「お住まいはご主人のご実家なんでしょう? 割と近いからすぐに会えますね」

スマホに向かって言う私の後ろをどたどたと走り回る三歳の娘。
保育園から帰り、夕食とお風呂を済ませてあとは眠るばかりの時間だというのに、絶好調に元気だ。この後の寝かしつけがちょっと憂鬱。
目の前のローテーブルで伝い歩きをしている一歳の息子。こちらも目がらんらんとしている。寝かしつけバトルは厳しい戦いになりそうだ。

「ええ、先日職場復帰をしたばかりです。瑛理も元気ですよ。今度営業二課の課長になるそうで」

ふたり目の保育園が決まり、産休と育休を終え、私も仕事を再開した。瑛理は職場での責任も増え、いっそう活躍している。役職についたら自由に動けなくなると言いつつ、やはり仕事ぶりが認められた瑛理は嬉しそうだった。

「土日は家族全員家にいることにしているので、ぜひ遊びにきてくださいね。……ってここはもともと美優さんのマンションだったんですけど」

笑い合い、帰国の日取りなどを聞いて、私は電話を切った。

美優さんが妊娠。それはとてもおめでたいことだ。
誠さんはまだ独身だけど、真剣に付き合っている女性がいるらしい。兄の邦親と瑠衣さんの一人息子はもう四歳だ。

結婚や出産がすべてではないけれど、幼いころから並んで育った私たちに、それぞれ愛する人や家族が増えたことは本当に嬉しいことだと思う。
< 156 / 166 >

この作品をシェア

pagetop