OL 万千湖さんのささやかなる野望



 万千湖が出て行ったあと、雁夜はカップ麺を作りながら、万千湖のお弁当をおいしくいただいていた。

「うん、うまい」
と卵焼きをもう一口食べて呟く。

「へえ、白雪さんって料理も得意なのか。
 『ああいう人』って、あんまり料理とかしないのかと思ってた……」
と笑う。

「雁夜、なに独り言言いながら食ってんだ?」

 その声に振り向くと、小鳥遊駿佑(たかなし しゅんすけ)が立っていた。

 給湯室の先にある、その場で()いてくれる自動販売機のコーヒーを手にしている。

「いやいや。
 今、おいしいお弁当もらってね」

 ふうん、と言いながら、駿佑はチラとその弁当箱の中を見る。

「……冷凍食品ばっかりだな」

「でもおいしいよ。
 あ、この卵焼きもおいしいよ」

 ちょっとあげるね、と雁夜は少し切って駿佑に渡す。

 駿佑は洗った手で受け取ると、口に放り込み、
「……うん、まあ、悪くない」
と言った。

 でしょ? と雁夜が笑う。


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