OL 万千湖さんのささやかなる野望



 万千湖は緊張して、経理の前にいた。

 あまり経理の人たちとは目を合わせないようにしよう。

 仕事の用事でもないのに来たことがバレるかもしれないし。

「……目を合わせただけでわかるとか。
 どんな超能力者だ、経理の人間」
と駿佑に言われそうなことを思いながら。

「失礼致します」

 入り口で深々と頭を下げ、万千湖は経理の中に入った。

 駿佑は窓に背を向けた席で、ノートパソコンを見ている。

 万千湖は彼に近づき、
「すみません。
 総務の白雪ですが」
と声をかけた。

 駿佑が顔を上げる。

「これ、小鳥遊課長のですよね」

 万千湖はコトリと消しゴムを駿佑のデスクに置く。

 それは黒い消しゴムだった。
 白い消しゴムカバーには、ファンシーなイラスト。

 絶対、俺のじゃないだろう……という顔を駿佑はしていた。
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