OL 万千湖さんのささやかなる野望
 


 ある日の仕事帰り。

 たまにはご飯でも食べに来たら? と言われ、万千湖は駿佑の実家にお呼ばれしていた。

 食後の珈琲をいただいたあと、美雪が、
「そろそろ家が建つわね」
と言ってくる。

「家具は最初から揃ってるんでしょうから、あんまり考えなくていいわよね」

「そうだな。
 だいたいそろってる」
と駿佑は頷いた。

「……白雪が時折、不思議なものを欲しがるけどな」

「なに不思議ものって?」
と訊く美雪に駿佑が言う。

「ラーメン屋の冷水機」

 そんな親子の会話を聞きながら、

 いや、ラーメン屋さんに行くたび、あれ、いいなって思うんですよね、と万千湖は思っていた。

 熱々のラーメンを食べたあと飲むラーメン屋さんのキンキンに冷えた水、たまらないですよ、と思っていると、美雪が万千湖を見て言った。

「あれはいいわよね」

 あれはいいですよね、と万千湖は美雪と目を合わせて頷く。

 駿佑が、俺にはわからん、と言う顔をしていた。
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