OL 万千湖さんのささやかなる野望
「ど、どうしたらいいんですかねっ?」
土曜の朝。
周りになにもない山の中、モデルハウスそのままの豪華さで建った我が家に万千湖はうろたえる。
もう何度も覗きに来てはいたが。
さあ、今日から、ここがあなたの家です、と改めて言われると動揺が止まらない。
「ほ、ほんとうに、ここに住んでもいいんですかねっ? 私っ」
清水たち住宅メーカーの人々にそう訊きながら、万千湖は側にいた駿佑の腕をつかむ。
駿佑にも問うた。
「課長っ。
ほんとうに、こんなすごい家に住んでもいいんですかねっ? 私っ」
だが、駿佑はなにも答えず。
無表情に腕を振って、万千湖の手を外そうとしていた。