OL 万千湖さんのささやかなる野望
 そのとき、万千湖のスマホが鳴る。

 駿佑から手を離し、鞄からスマホを出すと、母親からメッセージが入っていた。

「今日、何時ごろ行ったら()いてる?」

「二時くらいじゃない?」
と返したあとで、ついでにまた訊いてしまう。

「ねえ、たわし、ほんとうに、ここに住んでもいいのかなっ?」

 上から覗き込んでいるらしい駿佑が言った。

「たわしが住むのはどうかと思うが……」

 だが、万千湖はその打ち間違いにも気づかないまま。
 今のこの感動と感謝を伝えようと、清水たちに向かい、頭を下げた。

「ありがとうございますっ。
 こんな素晴らしい家を建てていただいてっ。

 ほんとうに夢のようですっ」

 すると、清水たちも感激し、
「そんなに喜んでいただけて、我々も嬉しいですっ」
とつられて涙ぐむ。

「どうぞ。
 この家の鍵です」

 この扉を開けたら、なにかクエストでもはじまりそうな感じに清水が鍵を渡してきた。

「あ、ありがとうございますっ」
と万千湖と駿佑はそれぞれの鍵を受け取る。
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