OL 万千湖さんのささやかなる野望
 


 万千湖は玄関ホールの、女王様が、ほほほほ、と扇をはためかせ、下りてきそうな階段を上がる。

 二階の読書スペースをそっと覗いてみた。

 レースのカーテン越しに差し込む日差しの中に、ぽんぽん、と置かれた淡い色合いのクッション。

 壁に作り付けの天井まである細長い本棚には置物と本が程よい感じに並んでいる。

「夢のようですね。
 引っ越したその日に、本がぎっしり」

 うっとりと万千湖が言うと、後ろで駿佑が、
「……これキッカケで家買うはめになったわけだから。
 1800万の本のような気がするけどな」
と呟いていた。





< 474 / 618 >

この作品をシェア

pagetop