OL 万千湖さんのささやかなる野望
広い玄関を開けた万千湖は感激する。
「最近のお洒落な美術館みたいですねっ。
下駄箱も大きいですっ」
万千湖は共有スペースの下駄箱を叩きながら、
「これ、それぞれのスペースにもありましたよねっ。
下駄箱、なにを入れようかなっ」
とときめく。
下駄箱に入れるのは、下駄……じゃなかった。
靴ではっ!?
という顔をみんながする。
いや、万千湖はそんなに靴を持たないので。
いつも、下駄箱の空いているスペースに収納しきれない本を入れたり、玄関に飾る小物を入れたりしていたのだ。
様子を見に来た業者のおじいさんが、
「今の子でも、下駄箱って言うんだねえ」
と妙なところで感心する。
学校で先生達が下駄箱というので、みんな普通に下駄箱と言っていたから、感心されたことに万千湖は感心してしまった。