OL 万千湖さんのささやかなる野望
ふたりでそれぞれの住まいに布団を運び、珈琲だと眠れなくなりそうなので、万千湖が持ってきていたココアを飲むことにした。
共用リビングで、万千湖の電気ポットでお湯を沸かし、駿佑のアウトドア仕様のマグカップにココアを淹れる。
万千湖が笑った。
「なんか家の中なのに、キャンプっぽいですね」
モデルハウスのときのまま、美しく飾られ、生活感のまったくないリビングは、まだよそよそしく。
確かに、借り物の家の中に持ち込んだキャンプ用品でちんまりお茶しているみたいになっている。
万千湖が淹れてくれたココアを飲みながら駿佑は言った。
「ここもあっという間に、生活感があふれるんだろうな」
その言葉の意味を読み取り、万千湖が言う。
「……いや、散らかさないようにしますからね、私」