OL 万千湖さんのささやかなる野望
 カップを片付けたあと、電気ポットを手に万千湖は、
「じゃあ、おやすみなさい」
と微笑んだ。

「なんか寝るのもったいないような夜ですけどね」

「……そうだな」

 ふたりで外で星でも見たい気分だったが。

 なんだか言い出すのは恥ずかしかった。

「お前はもう寝るのか?」

「そうですね。
 帰って、玄関に七福神様を置いて、拝んでから寝ます。

 この家を当ててくれた七福神様ですもんね。
 ああ、あと、三千円も」
と笑ったあとで、

「課長のおかげです」
と万千湖が自分を見上げてくる。

 不覚にも、どきりとしてしまった。

「お見合いに来てくださったのが、課長でよかったです」

 軽く心臓が止まったかな、と思った。
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