暴走環状線
〜警視庁対策本部〜

ビル内の各部署が集結した合同会議である。

「え〜それでは、連続している爆破事件について、対策会議を始める。まずは、各員報告を」

刑事課の富士本が進行を務める。

「刑事課の神崎です。まずは4件目までを再度確認しておきます」

神崎昴が、モニターに4件の写真を映す。

「最初の爆破は、池袋の信号で停車したワゴン車。次は原宿で路上駐車した軽自動車。3件目は、渋谷にある立体駐車場にバックで駐車したスポーツカー。4件目は新宿駅に停車した貨物列車。いずれも深夜に発生し、爆薬の規模も小さく、人的被害はありません。」

「刑事課の宮本です。この4件の被害者には、今のところ全く接点や共通点はなく、怨恨の筋も特に認められねぇ。対象物もバラバラだし、無差別と考えられます」

「同じく宮本紗夜です。犯罪心理的に分析すると、この4件に殺意はなく、逆に敢えて危害が人に及ばない様に配慮されています。また、対象に一貫性がないことから、試行的犯行と見て間違いないでしょう」

「試行…か。快楽的犯行ってことはないの?」

刑事課の鳳来咲が問う。

「はい。最初は普通に停車、次はゆっくり停車、次はバックで停車。そして最後は電車という振動が多い条件からの停車です。明らかに考え得るパターンを試しているもの、つまりは快楽的な要素は見当たりません」

「紗夜、犯人像はどう見る?」

単刀直入に、富士本が意見を求める。

「ここまでの犯行から見えるのは、犯人はかなりの知能犯。期間をかけて緻密に計画を立て、確実に実行できる、冷静かつ慎重な性格の持ち主で、犯行内容から年齢は30〜40。更に言えば、我々警察の動きや反応にも精通している者が主犯と考えます」

会場内がざわめく。

「警察関係者だと言うのか?」

「いえ、警察関係者てなくても、今では情報はネット上から得ることができますので」

「紗夜、主犯ってことは、単独犯ではないってことね?」

咲が感情論議になるのを止めた。

「私の経験と知り得た事実から、実行者は別にいて、爆発物の知識、遠隔またはタイマー操作する電子的な知識、機械的な強度を導く知識、そして、それらを入手できる者。少なくとも単独犯では不可能と考えます」

(なるほど…。確かに。)
紗夜の実績は、皆が知るところであった。

「じゃあ、昨日の2件を頼む。鑑識班と科捜班は.後ほどまとめてお願いする」

富士本が淳一を見る。

「了解。昨夜遅く杉並署交通課から、信号無視しながら逃走する不振車の通報があり、我々が到着した時には、爆発炎上した後でした。話によると、逃走中は携帯で誰かと話してた様で、踏切で停車した途端に爆発したとのことです」

「同じ内容なので、続けるわ。それから少しして、練馬署交通課から同様な通報があり、信号無視で突っ込んだ交差点で、トラックと接触し、爆発しました」

紗夜が昴を促す。

「最初の車の持ち主は、加藤吾郎 33歳。暴力沙汰で数回の拘留はありますが前科は記録にありません。2台目の所有者は、浜田智久 35歳、こちらも前科はありません」
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