禁忌は解禁された
「暁生くん!嫌!!やめて!!」
頭の上で両手首を押さえ付けれ、反対の手で頬を撫でられた。

「一颯の口唇って、柔らかいよね……」
「え?」
「“また”したいなぁ…キス……
………………俺が、全部教えたもんね………!」
「やっ…!!」
「キスも…」
口唇を、親指でなぞられる。

「それ以上のことも………」
そして暁生の顔が近づいてきた。

「わかった!わかったから!颯天に話してみる!!」
口唇が重なる寸前に、一颯は声を張り上げて言った。

「フフ…じゃあ、話しに行こ?」
微笑んだ暁生は、一颯の額にキスを落として言った。


そこに丁度、井田が帰ってくる。
「ただいま帰りました。
姫、大丈夫でしたか?」
「井田くん…」

「━━━━━━え////?ひ、姫////?」
井田に駆け寄った一颯は、井田のジャケットをキュッと握った。
突然の一颯の行為に、顔を赤くする井田。

「井田、颯天は今、何処にいるの?」
「え?」
「颯天に、会いたい……」
「姫?」

車に乗り込んだ三人。
井田が運転席で、銀二に電話をかける。

「若?すみません、忙しい時に……!」
『いや、どうした?まさか、姫に何か━━━━!!?』
「姫が、どうしても組長に会いたいとおっしゃってます」
『姫が?』
「はい。理由は教えていただけなくて、とにかく会いたいと………組長は今、どちらにいますか?」
『事務所にいる』
「では、今から向かっても大丈夫ですか?」
『わかった。組長には、伝えておく』

神龍組の組事務所に着く。
井田が後部座席のドアを開け、暁生、一颯の順に出る。

「姫!!ご苦労様でございますっ!!」
「ご苦労様でございます!!!」
事務所前に待機していた組員達が、頭を下げ挨拶してきた。

「うん、みんなも、いつもお疲れ様!」
井田に手を引かれ車を降りた一颯は、微笑み挨拶をする。
そして事務所を見上げた。

一颯はほぼ初めてと言っていい程、事務所に足を踏み入れたことがない。
それは事務所がとても冷たく、恐ろしい佇まいをしているから。

いくら暁生に言われたからといって急いで事務所に来ず、屋敷で話せばよかったと来たことを後悔していた。

「姫?行きましょう!」
「一颯、行こ?」
井田と暁生が、声をかける。

「うん……
暁生くんは、怖くないの?」
「ん?怖い?何が?」
「事務所…」
「そう?親父さんのをそのまま、颯天が継いだんだよね?」
「うん」
「凄いな。さすが、神龍寺 颯太だな……!」

どうして“凄い”という発想になるのだろう。

一颯にとって颯太は、父親としては尊敬し愛しているが、組長としては嫌いだった━━━━━

一颯は複雑な気分で、暁生を見ていた。
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