禁忌は解禁された
━━━━━━━━!!!!?
カシャン━━━━と音がして、救急箱が廊下に落ちる。

「え………井田…く…!?」
井田は、一颯を後ろから抱き締めていた。

「そんなわけないでしょ!?」
「え?」
「本当に“仕事だから”姫を守ってるんじゃないです!」
「井田く……」

井田は更に、抱き締める力を込める。

「大切だから……
姫は、俺の……大切な━━━━━━」

「組長が、お帰りなったぞーー!」
その時、奥から組員の声がしてきた。

「あ…す、すみません!!姫!!」
バッと離し、勢いよく頭を下げる井田。

「ううん……井田くん、あの━━━━━」
「組長をお迎えに行かないと!!」
一颯の言葉を遮るように言った、井田。
玄関に向かった。


「ただいまー、一颯!」
「……お帰りなさい…」
「姫、ただいま帰りました」
「「帰りました、姫!」」
颯天が一颯に抱きつき挨拶し、銀二、町野と百田が一颯に挨拶をする。

「お帰りなさい…」

「一颯?どうしたの?」
「え?」
「元気ないじゃん!ダチとランチしてきたんだろ?
楽しくなかったの?」
「楽しかったよ」

「姫?」
銀二も顔を覗き込んできた。
「井田、なんかあったの?」
町野が井田に問いかける。

「あ、知衛(ともえ)組の奴等が、姫に絡んできて……」
「は?あのおっさん達、ほんっと暇だよなぁー」
颯天が呆れたように言った。

「井田くん、怪我したの」
「そうだったんですね。姫が責任を感じることありませんよ。姫を守るのは、井田の仕事ですから!」
「そうだよ、一颯。気にすんな!」
銀二と颯天が、一颯に安心させるように言う。

しかし、一颯にとっては逆効果だ。

「どうして……!?」
「姫?」
「一颯?」

「どうして、そんなこと言うの!?」

「姫、どうし━━━━━」
「もういい!!!」
一颯は、その場を走りだし咄嗟に外に出た。

ちょうどそこに暁生が戻ってきて、おもいきりぶつかる。
「………っと!!姫!?大丈夫!?」

「あ……暁生くん……」
「どうしたの?泣いてる?」
「あ、いや…ごめん、すぐ泣き止むから!」
「え?なんで?泣きたい時は、おもいきり泣きな!」
暁生がゆっくり、一颯の頭を撫でた。

「いいの?」
「当たり前だろ?俺が、喜んで泣き場所になるよ!」
「ありがとう…」
「どうした?組長と喧嘩?
………なわけないよな?今、帰ってきたばっかだし!
志乃達に、なんかされた?それとも、井田さん?」
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