禁忌は解禁された
「若!!水と氷で━━━━━━え……若…何を……!!?」
井田が一颯の部屋に足早に入ってくる。

━━━━━━━━!!!!?
井田の手から水の入ったグラスと氷が、畳の上に落ちる。

そして銀二の胸ぐらを掴んでいた。
「あんた、姫に何やってんだよ!!?」
「………」
項垂れる、銀二。

「なん…で……あんなに、大切にしてたのに……」
「心が……」
「え?」
「バラバラになる……姫が好きすぎて……」
「若……」

「水、取ってくる。
姫の身体を冷してやってくれ……」
そう言って、グラスを拾い部屋を出たのだった。


ドン━━━━━━!!!!
颯天はおもいっきり道加を突き飛ばした。

道加が尻もちをつく。
「……っ…!!!!?」
見上げると、颯天の表情があまりにも恐ろしい。

「………」
「颯天、ごめんなさ━━━━━━」
「二度と!!」
「え……」
「俺の前に現れるな!!!」
「ごめんなさい!!」

「俺が愛してるのは、後にも先にも“一颯”だけ!!
それ以外の人間なんて、嫌悪感しかない!!
いいか?よく聞け!!次、俺の前に現れたらお前を殺す!」
そう言い放つと、颯天は去っていったのだった。

「組長!!」
帰路についていた颯天の前に、高級車が止まる。
町野が出てきて、後部座席を開けた。

「お前等、帰れっつったじゃん」

「しかし!そんなわけにはいきませんので!!」
「まぁ、いい。早く帰りたい。
帰って、一颯に触れないと……正気が保てない。
早く出せ!」

屋敷に着き、ベッドルームに向かう颯天。
バン!!と襖を開けると、銀二と井田が一颯の顔を覗き込み頭を撫でていた。

「何…やってんだよ!!?」
「え!?組長!!」
二人はバッと立ち上がり、頭を下げる。

「一颯、どうしたんだよ!?」
「風呂でのぼせて……」
「なんで━━━━!?
……………あとはいい。俺が傍にいる」
颯天はベッドに近づき、ベッド脇に腰かけた。
そしてゆっくり、頬を撫でた。

「組長、こちらに氷水を置いておきますので……」
「ん、わかった」

一颯の頬や身体はまだ熱い。
タオルが既に生暖かくなっていて、タオルを濡らし絞る。一颯の隣に横になった。ゆっくり頭を撫でる。
「ごめんね、一颯…一人にして……
ほら、俺達は……離れても、ろくなことがない。
もう……絶対、離れねぇ……!!
一颯、もう…離さないからね……」

頭を撫でていた手を、口唇を移した。
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