禁忌は解禁された
そう━━━━━三年前、手術は奇跡的に成功した。

しかし、一颯はその日から眠り続けている。

颯馬を帝王切開で取り上げたことで、一颯に負担がかかったのだ。


「できる限りのことはしました。
あとは、奥様の生命力次第です」


颯馬は、颯天と銀二達組員でこの三年間育ててきた。
颯馬には“ママは眠っていて、まだ起きない”と話している。

颯天も銀二も、井田達も……必ず一颯は起きると信じているから。


そして今日も一颯の病室に向かう。

「ままぁーー!きたよ!!」
「一颯ーー!」

本当に眠り姫のようだ。

綺麗な表情で、眠っている一颯。

「一颯。来月、颯馬の幼稚園で親子遠足があるんだ。
早く起きて、三人で行こうよ!」
「まま。いっしょにいこ?
かっちゃんも、さっちゃんも、ぱぱとままとくるんだって!だから、ぼくもぱぱとままと行きたい!」

颯天と颯馬は、毎日病室に通い話しかけている。

颯馬が、小さな手で一颯の親指を握る。
颯天は、一颯の頭をゆっくり撫でた。


「ぱぱ!!」
「ん?」
「まま、うごいた」

「は?そんなわ…け…」

顔を覗くと、瞼が微かに動いた。

「え……い、ぶき……?」

ゆっくり開かれる、瞼。

「一颯!!!?」
「まま!!!?」

「はや…て…」


「一颯、一颯、一颯!!」
「はや、て…」
「一颯、おかえり!」

「まま!!おかえり!」


それから慌ただしく、検査等を行い━━━━

「颯天がいる…」
「ぼく、そうま!まま、まちがわないで!」
「颯馬?」
「うん。まま、ぼく、しらない?」

「一颯、あれから三年経ってるんだ」

「三年……あ、だから、弟になった時の颯天なんだ」
「あー!俺、三歳ん時だもんな!
引き取られたの」
「うん。
そっか。颯馬か!お願い、叶えてくれたんだ!」

「当たり前!
一颯、颯馬を抱いてやって!
こいつ、ママに会えるのこの三年ずっと楽しみにしてたんだ!」

「もちろん!
颯馬、おいで?」

「まま?」

「うん!ママだよ!
もう、颯馬から離れないよ!」

「ずっと、いっしょ?」

「うん!パパとママと、颯馬はずっと一緒!!」

「……………うーー、ままぁーーーー!」
「颯馬、これから三年分いーっぱいお話しようね!」

颯馬は、三年間我慢していた思いを一颯にぶつけるように抱きついた。

一颯も、三年分の思いで颯馬を抱き締めたのだった。

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