禁忌は解禁された
「うん、わかってるよ」
「どこにも行かないよ」
「うん」
「暁生くんのこと好きだけど、それはお兄さんみたいな感覚なの。銀くんや井田くんみたいな。
私のこと、守ってくれる騎士みたいな」
「うん」
「ちゃんと、暁生くんには伝えてるんだよ?
私は、颯天しか愛せないって」
「うん。
でも、不安だから……
一颯のこと、好きすぎて」

「…………どうすれば、安心する?」
「うーん。安心はできない」
「え?」
「ずーっと四六時中くっついていられたらいいけど、そんなわけにはいかないだろ?」
「そうね」
「だから、安心は無理だと思う」

「颯天」
「ん?」
「来て?」
一颯は颯天に向かって両手を広げた。

「うん…」
颯天は吸い寄せられるように、一颯に覆い被さる。
一颯の手が、ゆっくり背中を上下に動く。

「颯天、大好き…」
「うん」
「好きなの」
「うん。俺も!大ー好き!」
「このまま…時間が止まればいいね……」

「うん…そうだね……」

それから抱き合い、一颯は颯天の寝顔を見つめていた。
颯天の頭をゆっくり撫でる。

そして颯天の腕の中からゆっくり這い出て、ベッドを降りた。
簡単にシャワーを浴びて、鏡を見ると身体中キスマークでいっぱいだった。

颯天の支配のようなモノが、見えた気がして少し嬉しい。

風呂場から出て、寝室に戻る。
廊下を歩いていると、銀二がいた。

「銀くん?」
「姫!?まだ起きてたんですか?」
「それはこっちのセリフ!!もう、夜中の二時だよ?」
「私は、そんなに寝なくても大丈夫なので……!」

「何してるの?」

「空を見てます」
「空?
あ、今日は満月?」
銀二の横に立ち、窓から空を見上げた。

「いえ…正確には、昨日が満月ですよ」
「そっか!でも、綺麗……!」
「そうですね」
「いつも見てるの?空」
「はい。毎日」
「そうなんだ!」

「ここから見る空が一番綺麗です……!」
空を見上げる銀二を、一颯は見上げた。

「………………銀くんは、新しい恋をしたいと思ったことないの?」

「え?」
「ママのこと、忘れられない?」
「そうですね…姉さんのことは、永遠に好きです」
「そうだよね。そんな簡単じゃないよね?」

「どうしたんですか?」
銀二が優しく一颯を見つめる。

「人を好きになるって、難しいね……」
「そうですね…」




二人は、しばらく空を見上げていた。



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