【完結】橘さんは殺された。


「そうですか」

 流石に七年前のことを詳しく知る人は、そう簡単には見つからないか……。

「そもそも今この辺にいる人達は、当時あそこにキャバクラがあったことも知らない人が多かったからな。 七年前のことを覚えている人は、少ないだろうよな」

「……ですよね。ここはだいぶこの七年で変わっているみたいですし」
 
 今と七年前を比べると、今は当時の面影なんてまるでないように感じる。

「ここまで、なんですかね……」

 これ以上俺には何も出来ることは、ないのだろうか……。
 せっかくここまで小さな欠片を集めて、見つけられたというのに。
 ーーーもうこの事件はここで限界、なのか?

 そう思った、その時ーーー。

「藤嶺、お前はここで諦めるのか?」

「……え?」

 瀬野さんはタバコの火を揉み消して、俺にそう問いかけてきた。

「お前は彼女がなぜ殺されたのか、その犯人が誰なのかを知りたくて刑事になったんだろ? なのにここで躓いたからって、ここで諦めるのか?」

 瀬野さんのその言葉が、今の俺の胸にずっしりと重くのしかかってくる。
 
「藤嶺、この事件の真相は必ずどこかにある。 真実は必ずどこかに眠っているんだ。……もしここでお前が諦めたりしたら、お前が今までやってきたことは全て否定されることになるんだぞ。それでもいいのか?」

 瀬野さんから熱くそう問いかけられ、俺は唇を噛み締めながら首を横に降った。
< 33 / 57 >

この作品をシェア

pagetop