【完結】橘さんは殺された。
「そうだな。……恐らく当時の警察は、父親は家族であって性的暴行をする加害者だとは、思ってなかった。だから指紋なども取らなかった」
家族が加害者だと、あの時疑うこともなかったから、父親のことは全く疑われなかった。
だけど母親は、恐らくその事実を知っていた。……だが警察には何も言わなかった。
「あの時母親が警察に何も話さなかったのは、恐らく……」
「父親からの、口止め」
だから彼女の母親は、何も話さなかった。……いや、話せなかった。
父親がその事実を口止めしていたから、話すことが出来なかったんだーーー。
「……瀬野さん。明日彼女の母親に、話を聞きに行きましょう」
「そうだな。話を聞くべきだな」
そして今度こそ、事件の真相をこの手で掴み取るんだ。
「ちなみに彼女の父親は、大学で科学鑑定に関する研究を行っていました。……その知識があれば、指紋を拭き取って残さなかったのも頷けますね」
「……なるほど。指紋を残さずに拭き取っていたのも、その知識があったから出来たって訳か」
瀬野さんは再び吸っていたタバコの灰を、灰皿に押し付けた。
「ますます、怪しいですね」
「まずは母親から話を聞いて、そこからだな」
「はい」
橘さん、もうすぐ真実を掴めるかもしれない。 橘さんを殺した犯人を、この手で捕まえれるかもしれない。
橘さん、待たせてごめんね。……必ず捕まえるから、橘さんを殺した犯人を。
だからもう少しだけ、待っててほしいんだ。