【完結】橘さんは殺された。


「あの子の父親は……元夫の友人だったんです」

「……え?」

「……元夫の友人と私は、一夜を共にしてしまったことがあるんです。夫と結婚したすぐ後でした」

 それが橘さんの、本当の父親ってことか……。

「夫に内緒で、その彼と会ったんです。相談したいことがあるからと言われて……。こっそり二人で会いました。その時に一夜を共にしてしまって……」

「……そうだったんですか」

「その後です。あの子を妊娠したと分かったのは……」

 母親は包み隠すことなく、全てを話してくれた。

「夫はとても喜んでくれました。だから本当の父親にも何も告げず、あの子を夫の子供として育てることにしました。 夫も何も疑わなかったので、幸せな家庭を築けると……そう思ったんです」

 母親はそう話した後、涙を流した。

「……だけどあなたのご主人は、娘さんが自分の本当の子供ではないと気付いたんですね?」

 俺は母親にそう問いかけた。

「はい。……元夫は、娘の父親が自分ではないと気付いたんです。娘が中学三年生の時です」

「……だからあなたの元旦那さんは、娘さんに性的暴行を加えていたんですか?」
 
 そして俺は、ついに確信に迫った。

「……っ!」

 母親はその言葉に、驚いたように伏せていた顔を上げた。

「やはり、そうでしたか」

「……はい。刑事さんの、言う通りです……」
< 41 / 57 >

この作品をシェア

pagetop