【完結】橘さんは殺された。
「はい」
「……娘を殺した犯人を、捕まえてくださるのですか?」
母親のその目は、まるで俺達に願いを託してくれているかのような目だった。
「……はい。今度こそ、捕まえたいと思っています」
俺はそのために、ここまで捜査してきたんだ。 ここで諦めたくはない。
「そうですか……。そうなんですか……」
母親は、少し動揺しているようにも見えた。
「それで、今日はあなたに聞きたいことがあって来ました」
「聞きたいこと……。何でしょうか……?」
こんなことを聞くのは、抵抗があるが……。
「あなたとご主人は、娘さんの事件の半年後に離婚されてますね?」
俺が母親にそう尋ねると、母親は「ええ……。まあ……」と返事をした。
「事件の捜査資料に、離婚した理由が娘さんの父親について……とあったのですが、それはどういうことですか?」
今度は瀬野さんが、母親にそう問いかける。
「………」
母親は答えるのを躊躇しているのか、黙り込んでしまった。
「橘さん。事件解決のために、我々に協力して頂けませんか?」
黙り込んでいる母親に、瀬野さんはそう伝えた。
「……離婚した元夫は、娘の本当の父親ではないんです」
そして母親は、静かに話し始めた。