辺境に追いやられた伯爵令嬢は冷徹な王子に溺愛される
「……それは……」
真摯に伝えられたその言葉にこれ以上何も言えずにいると、彼はアンネのさらにパンを小さくしておく。

「今すぐに何かを言って欲しいなんて都合のいいことは思っていない。でも俺の恩人ということで、二人を甘やかすから覚悟して」
少しイジワルそうに昔より色気をまとって言うアレックス様にドキッとしてしまう。

「さあ、アンネ、これもうまいぞ」

楽しそうにするアンネの姿を見れば、本当にこうして父親にかかわることは大切だし、私とのふたりの慎ましい生活よりどれだけ幸せなことだろう。

そうは思うも、私は怖さが勝ってしまい何も言葉にできない。

「フェリーネ。さあ食べよう」

昔よりもさらに優しく呼ぶ彼の声。
そんな風に私の名前を呼ばないで。

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