辺境に追いやられた伯爵令嬢は冷徹な王子に溺愛される
そこには、眉間に深く皺を寄せた彼がいた。お互いいろいろと秘密を持っている私たち。
約束などできるわけもないのはわかっている。
それに、私のような取り柄もない人間を、彼のように素敵な人が好意を持ってくれるわけもないのはわかっている。

でも、『もし帰ってきたら……』

その言葉を伝えてくれただけでも嬉しかった。同情でもなんでも、私との未来の可能性を少しでも考えてくれたことが嬉しかった。

「今は私の旦那様ですよね?」
そう私は彼にささやいていた。自分でもこんなことを言ったことに驚いてしまう。

驚いたように私を見るアレックスから、羞恥心で視線を外す。
こんな風に私が誰かを好きになることは、もう二度とないと思う。

「思い出をください」
なんの経験もない私がギュッと彼に抱きつけば、アレックスが息を止めたのがわかった。
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